獣医業界の遅れ
るりが天使になって2か月経ちますがまだいろいろな整理や、写真集作りの作業が進みません。
彼女と過ごした2年7か月はまるで流れ星みたいに、旅行から帰った後みたいに、最初からいなかったみたいなんです。
やっと0歳分の写真集が完成し、これから1歳分に取り掛かるところです。
遺骨を入れたガラスビーズのネックレスが届きました。
ラインスタンプは第2弾まで作ってただきました。
るりが亡くなり、私が一番お伝えしたいことを今回書きます。
知らずにるりを亡くしていれば私自身随分楽だったんだろうなという内容です。
だけど知ってしまいました。
るりがそうさせたのなら、それを広めるしか私にはできません。
猫は腹膜透析で戻ってくる可能性が高い
結局私の知識が十分であればるりはもう少し生きていたのではないかと思います。
そして私は、人よりは腎臓とか腎不全とか治療法のいろいろに詳しかったのです。
自分の子がそうであれば当然です。
だけどそれでも結果的には勉強不足でした。
本来医者からの提案でたどり着くべきルートに、自分から、医者の提案どちらでもたどり着くことができませんでした。
これはるりのかかりつけのお医者様が悪かったわけではありません。
るりが亡くなったのが6月17日。
透析の病院に連れて行ったのが6月15日。
あと1週間連れて行くのが早ければ、助かる命だったかもしれません。
透析について、腎不全についてはよく知っていると思っている方にこそ読んでほしいです。
2つの真逆の方針から医療を選択する
るりが静脈点滴の入院でこれ以上下がらないと帰宅したのが6月10日。
食欲はないもののそれほど切羽詰まった実感なくときどきお刺身を食べて過ごし、6月14日夕方にいつもと違う様子でひたすら私に喋ってきました。
変すぎて病院に連れていくと、自ら先生の膝に乗りきちんと挨拶をしていました。
夜に急変。
夕方以上の勢いでものすごく喋った後に急にぐったり引き込もり。
今思えば意識混濁が始まりました。
直感的に今晩だと思いましたが、お互い一睡もせずに翌朝を迎えました。
様子は相変わらずで、限りなく死に近く見えました。
何も口にせず、冷たい床でぐったり、ときどき珪藻土バスマットを舐めにいき、の繰り返し。
透析については当然知っていました。
私が当時知っていた情報は、
「どちらかというと急性腎不全向き、慢性に対しては効果と予算と苦痛のバランスが良くなく、延命することしかできない。」
こんな感じでした。
なので先天的な奇形による慢性腎不全のるりには関係がないと思っていました。
死にかけのるりに寄り添って、家で看取る覚悟を決めていた私に夫が「透析の名医がいる、話をしてほしい」とスマホを差し出してきたのでとりあえず気乗りしないものの電話しました。
ざっくり言うと、救える可能性もあるし、るりよりもっと酷い死にかけから復活した例もあるがやってみないとわからないとのこと。
しかしこの先生ものすごく胡散臭い。
何度も同じことを繰り返す話すし、町医者全批判。
私が信頼しているるりのかかりつけの先生のことも全否定。
正直この人に確率の低いことを任せようという気は起きませんでした。
ところが普段行動力も決断力もない夫がレンタカーを借りてきて行こうというので話を聞くだけということで渋々向かいました。
大雨の日でした。
るりは車の中で私の膝の上で大騒ぎ。
病院の前で車を降りて私はるりを抱きかかえて走ったのを覚えています。
すぐに先生が診てくださり、「既に低体温が始まっている。すぐに保温と静脈点滴、その後透析を開始します」と仰いました。
その覚悟をしていなかった私は引き止めました。
「入院中に急に死ぬことはありませんか?この子は必ず家で看取ります」
「可能性はあります。しかし急に死ぬ、ではありません。るりちゃんは今この診察台の上で亡くなってもおかしくありません。お家で看取りたいのであれば連れて帰られた方が良いでしょう。ただ、ここに来る方はもうすでにご家族でのお別れをちゃんとされているはずです。」
ここで初めてわかりました。
医療には2つの方針があり、両立はできないこと。
どちらかを選択しなければいけないこと。
ひとつは、苦痛を伴う延命はせずに苦痛を取り除く治療のみをして家族で過ごす時間を最優先する方針、もうひとつは、1分1秒でも命を長くという方針。
ずっとるりに前者での治療を行ってきて、自分自身にもそうしてほしいと思ってきた私にとってはかなりの衝撃でした。
そして、先生のおっしゃる通り昨日るりはちゃんとお別れの言葉を言っていて、私たちは既にお別れをしていたのです。
ならば賭けるしかないと踏ん切りがつきました。
ここからが本題です
翌朝「体温が35度代(猫の平熱は38~39℃)まで下がってきている」との電話がありすぐに病院に向かいました。
結局その日は夜8時ごろまで病院にいて1日中るりの手を握っていたのですが、 先生とお話する機会がたくさんあったので疑問や意見をぶつけてきました。
最初に胡散臭いと思った理由のトップは「独自のノウハウで透析でもちゃんと結果を出せる、しかし私が教えてこなかったもんで」という発言が度々あったこと。
医療業界でそんなすばらしいノウハウをお持ちならなぜ教えてこなかったのか、これについて聞く中で常識を一気にひっくり返されました。
最初はこの人頭おかしいのかなと思いましたが、どうやら違います。
日本が後進国だからとかいうレベルでなく、世界的に獣医療そのものが人間の医療と比べ遥かに遅れています。
「獣医なんてお医者さんごっこ」だそうです。
それどころか信じられないことに、間違った治療、病状を悪化させるような治療がごく当たり前に行われています。
これは獣医師に悪意があるわけではなく、獣医師ですらそれが正しいと思ってやっているのです。
るりのかかりつけの先生、東大病院含め国内ほぼ全ての病院でそのような治療が行われています。
るりも少なからずその影響を受けていますが、何度も言いますが先生が悪いわけではないのです。
製薬会社との結びつきだとか、動物は医療費が高く人に比べて需要が少ないとか、いくつかの理由で簡単に解決できません。
人間の場合医療保険があり医師も製薬会社も患者も守られています。
動物の場合それがないのもひとつの原因ではと思います。
人間では何十年も前に実用化されている薬や治療法が獣医業界には回ってきません。
いつかIPS細胞が実用化されても、永遠にこちら側には回ってこないのでしょう。
透析なんて最先端でもなんでもなく、30年以上前から人間では行われていた治療法です。
近々実用化される「腎不全の特効薬」と言われている薬は特効薬でもなんでもなく、とっくに人間では使われていてしかも腎不全初期の段階でしか効果は見込めないとのこと。
しかし初期ならば、皮下点滴や療法食などで間に合うのでその新薬の役割とは一体。
助からない命は「今の研究ではここまでが限界」なんだと思っていましたが違います。
「本当は放出できるものがたくさんあるのに制限されていてここまでしかできない」というのが現状です。
透析についても、私が以前持っていた情報はこの先生については当てはまりませんでした。
間違ったやり方で透析をするので、「効果がない」というイメージが広まりやる病院も少なくなる。
そして実際にそのやり方では効果がなく、値段が高くて苦痛ばかり大きい、になってしまう。
透析お考えの方いらしたらメッセージいただければ横浜市ですがご紹介します。
そういうことで、とにかく獣医業界は世界的に見てかなり遅れています。
理由のひとつとして「動物にそこまでするかという問題もある」と先生は仰いました。
先生がそう思っているわけではなく、世間一般にそういった考えがあるのだと思います。
ちょっと田舎にいけば半野良の猫や外飼いの犬がいて、それに対し何とも思われない世界が普通にあります。
人間の子どもを産むにしろ、動物をペットショップで買うなり里親になるなり拾ってくるなりして家族に迎えることは、同じではないでしょうか?
子供を産むも動物を飼うもどちらもしなければいけないことではありません。
家の前に弱った子猫がいるからって、拾う義務はありません。
やりたくてわざわざやっていることです。
ならば責任は同じです。
そこまで負えないならしなければいいだけのことです。
長々書いてしまいましたが、多くの人が情報に触れることができないだけで、末期の子でも打てる手がまだあるということはあります。
もちろん必ず助かるわけではありません。
そして打つ手は早ければ早いほど良いのです。
私は手遅れで最愛の娘を亡くしました。
助かる命が「助からない」で片付いている現状なので、どうか諦めずに「家で抱っこしながら看取りたい」で片付けずに最後まで探してほしいと思います。
「死にかけ」と「死んでいる」にはとてつもなく大きな差があります。
私も苦痛しかない、または意識がない無駄な延命は推奨しませんが、戻ってくる可能性があることを知って試してほしいです。
犬の場合は透析は一時的な効果であることが多いようですが、正しく行えば猫の場合はそこから持ち直す確率が高いようです。